『稲妻』成瀬巳喜男(1952年)

グダグダの人間関係を描かせたら天下一品の成瀬監督。この『稲妻』もグダグダ具合が心地良い。一般的には成瀬巳喜男の最高傑作と言われる『浮雲』(1955年)を最初に観て、成瀬作品に拒否反応を持っていたのだが、いつの間にか、この成瀬ワールドに馴染んでしまった自分がいる。
高峰秀子演じる主人公の言葉を借りれば「ずるずるべったり」な人達が織りなす世界を淡々と描いた『稲妻』。一番ドラマチックな出来事は、清子(高峰)の姉の旦那が亡くなる事くらいか。主人を亡くして号泣したり、お骨を大事に扱う様子を周りの人間は凄く冷ややかに見てる。登場人物の中では一番“まとも”な清子は、ずるずるでだらしない人間達が嫌になり勝手に引っ越してしまう。そこで出会った“まとも”な人達とも、ドラマチックな展開もないままに終わる。一番“まとも”な清子の元にダメダメな母が尋ねて来た時、お互いぶつけ合う言葉の何ともキツいこと。一生トラウマになるか、親子の縁が切れるかぐらいの言葉を浴びせ合ったのに「稲妻」をきっかけに何もなかったかのように元通り。
平穏な日常とトラブルが何気なくフェード・イン、フェード・アウトする、というこの作品を象徴するかのようなシーンが二つある。
まずは姉と龍三が会話している後ろで、ピンボケ状態で幼い子供を背負い、エキストラのようにウロウロしているのは、亡くなった姉の旦那の愛人。この後、姉がその事実を知るという展開になるのだが、この登場の仕方は寅さんの登場シーンとそっくり(笑)
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もう一つのシーンは、愛人の生活費の相談の帰りに姉妹で立ち話をしている後ろにピンボケ状態で背景に馴染んで映る愛人。この直後に気付く二人だが、何とも印象的なシーンだ。どちらも気まずい場面なのに、少し笑えてしまう。
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しかし、シュールだ。
しばらく成瀬作品は小津と並んで、良い酒の肴になるなぁ。
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by quampaney | 2009-09-03 23:53 | 映画 / アニメ | Comments(0)