小津安二郎の「緑」/その2『お早う』

以前の記事、小津安二郎の「緑」—その1『浮草』では、大映作品『浮草』での色彩設計は「緑」に特徴があるように書いた。DVDのオーディオコメンタリーでそう説明されていた事に納得したからなのだが、それをきっかけに小津のカラー作を見返してみたら、『浮草』だけでなく、小津のカラー作全般に共通していたのが分った。つまり大映の美術デザイナー“下河原友雄”氏の指示や趣味という事ではなく、小津安二郎自身が意図的に使っていた重要な色だったのだ。
中でも、小津のカラー作品としての第二作であり、『浮草』の直前に製作された『お早よう(1959年)』ではとりわけ顕著だ。『浮草』と同じように、建物の塗装が見事に「緑」で統一されているのだが、特にこの映画では、登場する建物のほとんどが集合住宅やアパートなどペンキ塗装が多いセットで撮影され、至る所に「緑」が使われている。

堤防の側に建てられた集合住宅は屋根から玄関のドア、雨戸袋まで「緑」でペイント。学校(左下)の壁も同じく。真ん中の2枚はアパートだが、サッシやベランダの塗装、玄関のドアまで「緑」(右真ん中の写真に映っているドアは、たまたま照明の具合によってグレーっぽく見えてるが、これも「緑」)。ちなみに、同じ写真の手前に見えるのは緑色をしたクッション。アクセントとしての「緑」です。
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このクッションのように、アクセントとしての「緑」も、他にたくさん登場する。
オープニングの鉄塔、廊下に置かれたバケツ、ヤカンなどの小物などあちこちに使われている。しかし他の色、たとえば「青」や「黄」といった色は「緑」と比べると極端に少ない。(ラスト近くに出てくる“火鉢”は青色。)全体的に“塗装色”の多くは、例の「青味がかった緑」で、アクセントとして「原色に近い緑」、そしてお馴染みの「朱(あか)」で画面を引き締めている。
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多くのシーンが、監督のコントロールの効く“セット撮影”なので、意図通りに同じトーンで統一する事が可能だ。独特なカメラワークや編集と相まって、計画的に色彩設計された映像が、小津作品を観ている時の何ともいえない安心感を生み出している要素の一つに思う。

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by quampaney | 2009-12-04 21:33 | 映画 / アニメ | Comments(0)