『大学は出たけれど』-2:小津の切り返しショット[1]

『大学は出たけれど(1929年)』で、一番「はっ」としたのは後年の小津には欠かせない「切り返しショット」が出て来た事。デジャヴュというと変だが、小津映画独特の違和感を感じて気が付いた。
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しかも徹夫(高田稔)のウエスト(バスト)ショットを挟んで
〝誰があんな所で働けと言った!〟
というセリフ(字幕)が続けて二度言われる。こういった、お馴染みの“繰り返される台詞”も、すでにここにあった。初期の作品はフィルムが現存しない作品が多く、『大学は出たけれど』まで9本が観る事が出来ない。この作品も本来の長さの数分の一しか残っていないので、このカットが小津作品での切り返しショットの“お初”とは言い切れないが、現存する作品の中では、ひょっとして“一番最初”なのでは?

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高田稔の罵声を受けて
〝働く者が一番仕合わせだと思っただけです。楽にもなるし〟
〝おっ母さんにも心配をおかけしまいと〟
と町子(田中絹代)の字幕が続いた後、いつの間にか寝転んでいる徹夫と、彼をなだめるように声をかける町子がいる。そして
〝おれがあんまり呑気すぎたんだ−−−〟
という字幕。すすり泣く町子。そして翌朝(というには暗い)の土砂降りのシーンへ・・・
わずかに残された“断片”ともいえるフィルムで編集されているので流れが不自然だし、どの程度の口論だったのかは想像しづらい。

“小津調”を確立した後の「切り返しショット」を並べてみる。

『東京物語(1953年)』
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『彼岸花(1958年)』
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『秋日和(1960年)』
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切り返しカットを探しながら思ったのだが、戦後作品では意外と正面ショット、もしくは顔だけが正面向きというショットが多いような気がする。それと典型的な切り返しショットは、割とアップに近くほとんどバスト・ショットと言えるカットが多い。それに対して『大学は出たけれど』ではカメラが引き気味で、ウエスト・ショットに近い。
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続く>>> 小津の切り返しショット[2]:視線の先には誰もいない
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by quampaney | 2010-04-12 21:38 | 映画 / アニメ | Comments(0)