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King Crimson 2008年:幻のラインナップによるライヴ

大好きなキング・クリムゾン、なかなか前線に復帰してくれない。前回2003年の来日から随分経ち、私もすっかり情報に疎くなってしまっていた。翌年、トレイ・ガンが抜け、スケジュール多忙のためメンバーでありながら休止状態だったトニー・レヴィンが復帰した事は知っていた。『レッド(1974年)』の後や『スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペア(1984年)』の後の解散とも、ダブル・トリオ後の一時的なプロジェクトへの移行とビル・ブラッフォードの脱退による空白期とは違い、活動待ちの状態が続いていた。ところが、クリムゾン結成40周年にあたる2009年にアクシデントがあったらしい。すっかり情報から遠退いていた私は知らなかったのだが、クリムゾンは前年の2008年から、フリップ〜ブリュー〜レヴィン〜マステロットに加え、フリップお気に入りのバンド*Porcupine Tree(ポーキュパイン・ツリー)のドラマー、ギャヴィン・ハリソンを加えた新しい編成で活動を開始しており、ツアーも行っていたのだ。
 *スティーヴン・ウィルソン(K.クリムゾン5.1chのリミックスも担当)が
 元JAPANのリチャード・バルビエリらと組むプログレ〜ヘヴィ・ロック・バンド
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そして、翌2009年の予定を確認するために、エイドリアン・ブリューがフリップにスケジュールをメールした所、クリムゾン40周年の記念すべき活動が予定されていた重要な期間に、どういう訳かブリューのソロ活動がダブル・ブッキングされていた事が判明。フリップは激怒して、何とクリムゾンの活動自体を白紙にしてしまった。その後、ブリュー側は予定の変更を申し出たが、時すでに遅し。フリップは完全に臍を曲げ、クリムゾンの活動そのものに関心を無くしてしまっていた。フリップ曰く「これはカレンダー上の日程の問題ではない。関心を持つこと、意図すること、集中すること、没頭すること、やりとげる意志を持つことの問題なのだ」そうだ。『ライヴ2008』というタイトルでリリースされる予定だったニュー・アルバムも、急遽発売中止となった。※ダウンロードでの購入は可能(追記参照)

※いつもステージでは陰に隠れている“リーダー”フリップ師”だけど
 これでは御姿が客席から見えませんがな(´・ω・`)
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トニー・レヴィンのサイトを辿ってみると、さすが!ちゃんと日記が残っていました。
(我々は、戻ってきたーーーーーっ!!)
仕方なく、久々にブートで音源を探してみた。2008年8月11日ペンシルヴェニア公演が出ていた。(※リンク先はトニーの日記)以下、その演奏をレビューします。オーディエンス録音のため、音質はイマイチで分離も悪いですが、全く体験できないよりは良い(^_^;)

※ギャヴィン・ハリソン(Gavin Harrison)


まずは新ドラマー、ギャヴィン・ハリソンのお披露目も兼ねて「Drum Duo」からスタート。定位がはっきりしないので、二人の区別が難しい。エレドラはマステロット、細かいバスドラはハリソンだろうから、マステロットで始まりハリソンに移行し、最後はエレドラで終わるという流れ。デュオというより、一部重なりながら交互にプレイしたように聴こえた。
そして「コンストラクション・オブ・ライト」に続く。二人のスネアのフレーズをきっちり合わせているのでオリジナルと印象が違う。ドラムレスになる箇所ではトニー・レヴィンが曲に慣れていないせいかタイミングが合わない。ライドのフレーズは2003年の来日公演の時のようにシンプルなまま。続いては何と「ニューロティカ」だ。「コンストラクション…」の原型とも言える『ビート』収録曲。似た曲、しかも難曲を続けて演奏するとは意外な構成。ただ、嬉しい事に“語り”パート後のヴォーカル部分を1コーラス分丸ごとインストで演奏してくれた。この曲は1981年の初来日の時には「マンハッタン」というタイトルでのインスト曲として披露された。ヴォーカルのパートが出来ていなかったのか、それとも難曲のためヴォーカル入りの演奏が出来なかったのか不明だが、初来日公演でのハイライトだった。同メンバーでの2枚目のアルバム『ビート(1982年)』がリリースされると、ヴォーカル曲になってしまってガッカリした覚えがある。歌が乗った事で、演奏の複雑な絡みを楽しむ醍醐味が半減してしまった。カラオケ・ヴァージョンをボーナス・トラックでも何でもいいから出して欲しいとさえ思っていた(笑)。本人達にも自覚があったのか、そういうリクエストがあったのか分からないが、インスト・パートの後にヴォーカルが入るという展開で、これだけでもアルバムを買った意味があった。
続く曲は「レッド」だ。何と濃密な展開のライヴだろう。中間部では、アクセント部分を含め珍しくドラムが音を散りばめる。こういったアレンジは初なのでは?新メンバーであるハリソンのアイデアだろうか。とにかく全体的にブラッフォードの呪縛が解かれたかのような炸裂するツイン・ドラムが心地良い。
雰囲気が一転して「スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペア」。原曲ではブラッフォードの“一人ポリリズム”だったのをダブル・トリオ時代にはリズムを分解して二人で叩いていたのが面白かった。今回はそれとは全くリズムを組み替えた新アレンジのドラム・セクション。時折ハリソンの激しいプレイに触発されてか、レヴィンが細かいフレーズで応戦していた。
そして「ダイナソー」に続き「トーキング・ドラム」と来れば「太陽と戦慄パート2」だ。この曲のテンポは、イントロでのフリップに命運が賭かっているのだが(笑)、この時は、ほとんどオリジナルに近いテンポでリフが繰り出された。落ち着きがあって、かつヘヴィ。こんな演奏を生で観たいものだ。
箸休めの「ウォーキング・オン・エアー」に続き、ダブル・トリオ時代のドラム・アンサンブル「B'ブーム」。これは、作曲されたデュオ演奏。
そして、お馴染み「フレーム・バイ・フレーム」に続いて「レヴェル5」。今回はプログラミングを使用していない模様。特殊な音色なのでマステロット自身が人力で叩き、ベーシックなパターンをハリソンが担当しているのか。中間部で、ダブル・トリオ時代「スラック」の途中でよく演奏された“二人での”クラッシュシンバル・ミュートが登場。なかなか効果的な使い方。プロジェクト3〜4の流れを汲んだデジタルな曲が、ツイン・ドラム向きでライヴな曲として生まれ変わった。
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次の「インディシプリン」は、今回ハリソンがメインなのか。いつも以上にアグレッシヴだが、ギター・ソロのバックでのバスドラム4つ打ちは、ちょっと頂けない。
続いて再びドラム・デュオだが、これは面白い。2台のドラム・キットがテーマとなるアンサンブルを奏でた後、マステロットが導くベーシックなリズムにハリソンが複雑に絡み、曲がポリリズムに膨らんで行く。途中シンバルやベル中心の演奏になったり、エレドラの聴かせ所があったりと二人のドラマーの個性を生かしつつ起伏のある展開を見せ、いつの間にかテーマに戻って終わる。


ほとんど間を置かず「セラ・ハン・ジンジート」が演奏されるが、シンコペーションを生かしたハリソン主導の新しいリズムに置き換わっており新鮮だ。スラップも交えたレヴィンのプレイには、こういったアレンジの方が合っている。
アンコールの後「エレファント・トーク」に続く「ヴルーム」の後半で一時ハーフ・テンポになるという新アレンジがあった。同曲のエンディングである「コーダ:マリーン475」で終了。

演奏内容は非常に充実したライヴだと思った。ダブル・トリオ期に最も近いが、完成度はそれ以上。ダブル・トリオ期のツイン・ドラムのアンサンブルは、ブラッフォードが“主”でマステロットが“従”という関係だったが、今回はほぼ対等の関係に聴こえた。先天的なテクニシャンというより努力家でアイデア・マンだったブラッフォードと、彼を崇拝するマステロットもアイデアと創意工夫のミュージシャンだ。ベクトルは同じだが、先輩に対しての遠慮があるように思えた。今回のツイン・ドラムは、先輩であるマステロットが後輩のハリソンの天才的な技術を完全に受け入れて上手くミックスしているようだ。さすが、“Electronic Taps & Buttons”のマステロットだ。
※ちなみに、ビル・ブラッフォードは1949年、パット・マステロットが1955年生まれなので6つ違い。ギャヴィン・ハリソンはマステロットの8つ下で1963年生まれ。

新曲がない状態でのツアーなので、バンドとしてのアイデアやコンセプトはこれからだっただろう。ただ、リズム・セクションの充実振りに比較して、ブリューとフリップの進化が今一つ伺えないのと、なんとなくヴォーカル曲が減ったのが気になる。ノー・アイデアの状態とエイドリアン・ブリューの位置付けという伏線が、すでにあったのかも知れない。

※以下“誤報”(9月7日追記参照)
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ネットでの情報によると、その後のキング・クリムゾン最新のラインナップは
ロバート・フリップ(Robert Fripp)…ギター
ジャッコ・ジャクジク(Jakko Jakszyk)…ギター、ヴォーカル
トニー・レヴィン(Tony Levin)…ベース、チャップマン・スティック
ギャヴィン・ハリソン(Gavin Harrison)…ドラムス
メル・コリンズ(Mel Collins)…サックス、フルート
という編成らしい。一次ソースは不明。
ジャッコは、21st Century Schizoid Bandのフロントを担当。つまりフリップとグレッグ・レイクの“影武者”もこなす器用なミュージシャン。

メル・コリンズは、言わずと知れた70年代のクリムゾンやキャメル等に在籍したベテラン。ひょっとして回帰路線なのか?そういったコンセプトの方向変換があったとしたらエレクトリックなパット・マステロットがクビになったのも分かるが…。
ところが、このメンバーでの新譜が発売中止という話もある。その新作制作の為にアルバム2枚分のデモも出来上がっていたという話もあるが、真偽含め詳細は不明。また、色々と分かり次第まとめてみたいと思う。
それと情報求む。

※追記(9月7日)
ジャッコやメル・コリンズの参加という、唐突で不自然なメンバー・チェンジは、Jakszyk, Fripp & Collins名義で製作中の『A Scarcity of Miracles』というアルバムの情報と混乱していたようです。
>>http://www.elephant-talk.com/discog/fripp/indexr.html
たしかに、Tony LevinとGavin Harrisonの名前も書かれています。
恥ずかし過ぎる早トチリのようでしたm(_ _)m
※後に、『ProjeKct Seven』として活動する予定のユニットだったと判明。
 (Robert Fripp's Diary関連記事を参照)

※追記(9月8日)
『LIVE 2008(August 07,2008 Park West Chicago,Illinois)』はDGM Live!にてダウンロード可能。
>>http://www.dgmlive.com/archive.htm?artist=16&show=1301

※追記(9月9日)
ダウンロードして『August 07,2008』を聴いてみた。
分離の良い正規音源なので、レビューに見当違いな箇所があった事が分かった。
(例:「コンストラクション〜」…のスネアのフレーズをきっちり合わせている…等)
近いうちに『LIVE 2008(August 07,2008)』の記事を考えています。

■主な関連記事
 キング・クリムゾン終了(ロバート・フリップ引退)
 変態BGM:King Crimson「Form No.1」
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by quampaney | 2010-08-31 22:59 | 音楽 / バンド | Comments(5)
Commented by ゲウゲY男 at 2010-09-09 23:11 x
やっぱ クリムゾンは王道だなぁ、懐が深い過ぎる。
Commented by quampaney at 2010-09-09 23:38
コメントありがとうございます。
フリップはロック界のマイルスですね。同窓会に参加する時は、死期を悟った時(笑)。そろそろブリューを許してあげてバンドの形に戻す“懐の深さ”を見せて欲しいです。ダウンロードした'08年のライヴは凄まじかった~。
Commented by Chuck=Damian at 2010-10-17 19:14 x
詳細なる レポートありがとうございます。
フリップ翁と メル・コリンズとの 再接近 興味ありますな~。
Porcupine Treeも 好きなバンドですし トニー・レヴィンとの リズム隊 生で観て見たいものです!!
ちなみに わたくし Damianの名の通り トニー・レヴィンとは 同じ誕生日であります。
Commented by quampaney at 2010-10-17 19:43
DamianなChuckさん、やっぱり!(笑)
長い付き合いの中で、なぜか映画の話はした事がなかったので
頭の中に疑問符が一杯でした(笑)
Porcupine Treeも好きなんだ〜。
リハーサルを見るチャンスがあったんですが
始まる前に帰ってしまった痛い経験があります。

Chuckさん、また一緒にライヴやりたいですね〜。
今後もニッポンのレヴィンとして益々活躍して下さい。
ではでは。
Commented by Chuck=Damian at 2010-10-18 00:59 x
是非是非 また やりましょう!! あのバンドも 結成30年を 迎えました。また演奏も宴会も やりたいですね。