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『The 21st Century Guide to King Crimson
(真・紅伝説~21世紀のキング・クリムゾン・ガイド)Volume Two 1981-2003』
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Disc 1,Track 14「Form No.1」
Robert Fripp, Adrian Belew, Pat Mastelotto, Tony Levin:2004年
※String Arrangement & Co-Production by The Vicar
2003年『The Power to Believe』のリリース&ツアーの後、その年の終わり頃にトレイ・ガンが脱退。そして『The ConstruKction Of Light(2000年)』から不参加だったトニー・レヴィンが、予定通り翌2004年に復帰した。結果的にメンバーが入れ替わる形となり、フリップ+ブリュー+マステロット+レヴィンという『Lineup #7』と呼ばれる編成となった。このラインナップでの録音は、現在のところ2曲のスタジオ録音しか発表されていない。そのうちの1曲が、4枚組ベスト・アルバム『The 21st Century Guide to King Crimson/Volume Two 1981-2003』に“こっそり”と収録されているのを知った。それが「Form No.1」という曲で、この“1曲”を聴くためにこのアルバムを購入(^_^;)。4枚のうち'80年代のスタジオ録音を収めた1枚目の「Bonus Tracks:1982-2004」に収められているので「Form No.1」は2004年のレコーディングという事が分かる。ギャヴィン・ハリソンが加わって5人編成になるのは2008年だから、レヴィン復帰後、間もない頃の録音だ。
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実は、この曲については一言コメントくらいでスルーするつもりだった。初めて耳にする“新曲”だったが、ワン・コードの肩慣らしセッションをコンパクトにまとめた程度の様にしか聴こえず、特に何か書いておこうという気にならなかったのだ。だから、前の記事にも、この曲について触れるような告知はしなかったし、ブログの下書きを兼ねたメモにも、こう書いてある。「レヴィンの堅実なベース・ラインがキモ。だが何の変哲もなさそうで、面白さが分からない。ひょっとすると、何かトリックが隠されているのか?」ギターらしい音は聴かれず、音源にはバイオリンなどストリングス系の音色のみ。♩=135くらいの軽快(笑)なテンポながらBGM一歩手前といった曲。しかしクリムゾンのこと、“何か”が仕組んであってもおかしくないはず。…という訳で、いつものように拍子を数える事から始めてみた。

ノーマルな四拍子(8/8)の曲だろうと思い込んでいたが、ちゃんと聴いてみると、そもそも曲の頭がどこなのか迷う。仮に四拍子だとしたら、最初の1拍”が余分なので「弱起」の曲なのかも知れないと考えた。静かなストリングスに導かれて始まるベースとドラムの第一音。ハイハットのアクセント(白の△マーク/必ずしもハットの位置ではない)をバック・ビートの位置と捉えて「2、4…」と聞くのが自然だと思った。
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ところが、すぐにハイハットが裏返る。かと思うと、9/8拍子を挟んで元通りのアクセントに戻る。やっぱり、お得意のトリックがあった。ベース・ラインも、どう聞いても変拍子が何度か登場する。特に耳に残るのは、曲の節目で出てくる5/8を交えたフレーズだ。
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節目に入るフィルイン的なメロディなんだが、この入り方がクセもの。という訳で、「弱起」の曲ではなく、素直にベースの区切り通り「9/8+8/8+9/8+7/8」というイントロと考えた方がスッキリするので、↓このように直してみた。
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う〜ん、どうもベース・ラインの途中で1拍目が来るのも不自然だ。休符を含めて8拍+3拍(テーマが被る場合は8拍+2拍)と考えた方が分かりやすい。b0183304_20375032.jpg
曲の後半で、控え目ながらタムが入るなど少し変化を見せた後、ベースのフィルインを意識したような5/8拍子をマステロットが叩き始める。それに反応するようにレヴィンのフレーズも次第に5拍子を絡めるように聞こえてくる。あれ?本当にそういうフレーズなのか。ヘッドフォンでヴォリュームを上げて聴くと、今まで気づかなかった音が鳴っていた!ドラムとベース、ヴァイオリン(ギター)2本以外に、延々と5/8拍子を奏でる音があったのだ。ヴァイオリンか生ギターをポロンと鳴らしたような音が左右のチャンネルに分かれて聴こえる。2台で弾いているのか1台で弾いたリフをLRに振り分けているのか、はたまた手弾きなのか打ち込みなのか分からない。このシーケンサー的なリフが、ストリングスのイントロに続くベースとドラムの第一音と同時に始まって、エンディング・テーマのぴったり直前まで続いていたのだ。
5/8のリフを描き足して最初から修正。

1.
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やっぱり「5/8」が鍵だったのだ。この音に気づいてからはイージー・リスニング/BGM的だと思っていた「Form No.1」が、全く違う曲に聴こえて来た。織物のように繊細でトランス効果さえ感じる。ポリリズムではあるが、'80年代の「Discipline」や「Waiting Man」などのように“ポリリズムそのもの”を楽しむ曲とは違う。このシーケンシャルなリフは、音色と音量バランスのせいで、ソロの掛け合いやテーマなどでは埋もれてしまっている部分が多い。もう少し全面に出していたら、また違うイメージの曲になっていただろう。

2.
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ハイハット中心の静かでシンプルなドラミングを基調に、フリップとブリューはピチカート音を交えたヴァイオリンの音色でソロの掛け合いをする。ゴリゴリと力強くピック弾きされるベースだけが、かろうじて攻撃性を感じさせる。7/8の後、再びテーマに戻るとイントロと同じようにアクセントが頭(奇数拍)に入る。テーマの2周目頭はベースのフィルインの最後と重なる(※マーク)。クラッシュ・シンバル(下向きの▽マーク)も、小節の1拍目の時と2拍目の時があるし、レヴィンのフィルインの直後に入るとも限らない。

3.
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タムが入るパターンの後に来る、スネアを含めた5/8拍子のドラム・パターンはベース・ラインを意識しているというよりバックで鳴り続けているリフに合わせていたのだった。ここで初めてスネアが聞かれる。このドラム・パターンとベース・ラインの絡み合いが心地良い。それぞれの楽器に神経を集中させるとシンプルなのに、アンサンブルとして聴くとベースも5/8フレーズを弾いているような錯覚に陥る。ヴァイオリンのピチカートも、このパートでは必然性を感じるし、5/8のシーケンシャル・リフとドラム・パターンは、ここではユニゾンでなければいけないのだ。
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前記事の「Message 22」と同じく「Form No.1」もギターの音色で損をしていると思う。「Elektrik」で聴かせたギター2本でのフルート・アンサンブルを、脱メタル路線で試してみたのだろうか。しかし、第一印象がイージー・リスニング/BGMに聴こえてしまっては勿体ない。気が付きにくい所に凝り過ぎて大局を見失っているように思う。

2003年、トレイ・ガン(Warr Guitar)在籍時。
日本公演での「Elektrik」。しかし衣装がヒドすぎる(>_<)

・・・どうも食い足りないとうか、不満が残る。
悪くはないんだけど、色々と中途半端。

『Power to Believe』からの曲だったら、これだなぁ…。
ステテコ姿ながら(苦笑)、エイドリアン・ブリューのソロが凄まじい!


■主な関連記事
 キング・クリムゾン終了(ロバート・フリップ引退)
 King Crimson:隠れた名曲「Message 22」
 King Crimson 2008年:幻のラインナップによるライヴ

※『The 21st Century Guide to King Crimson/Volume Two 1981-2003』全体については、
 以下のサイトに丁寧な詳細記事が書かれています。
 >>King Crimson Data Base
 >>Fractalism
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『Power to Believe Tour Box』
b0183304_21503235.jpgTrack 10「Message 22」
Robert Fripp, Adrian Belew, Trey Gunn, Pat Mastelotto
※Recorded at Studio Belew,11th March 2002
 Assembled by Pat Mastelotto and David Singleton
これは2003年のPower to Believeツアー時に会場で売っていたアルバムで、ツアー・ボックスといっても、1枚のCDと20ページの英語版ブックレットがDVDトール・ケースに入ったもの。コンサートのパンフ代わりとしてのCDで、実際まとまった“曲”といえるトラックはほとんどなく、『パワー・トゥ・ビリーヴ』(以下PTB)の制作過程で完成には至らなかったデモ音源やセッション、インタビュー等が収められている。その中で、ちょっと気になった未発表曲「Message 22」は、'80年代クリムゾンのようなリフを用いた曲。ただしリフは、琴か三味線の様な(以下“邦楽弦”と表記)音色で演奏されているのが特徴で、人によっては違和感を感じるだろう。'80年代といえば、ビル・ブラッフォードの左足側に置かれたシモンズのバスドラで鳴らしていた「チンッ!」と鳴るペダル・ハイハットの代用音があるが、これに似せた音を、2002年のレコーディングで使われていた事は個人的にツボだった。
CDケースの裏ジャケットに「Message 22」について“Assembled by Pat Mastelotto and David Singleton”とある。編集の痕跡は多いが、ProjeKct Xやbpm&m(またはProjeKct3,4)等とは随分と毛色が違う。David Singleton(デイヴィッド・シングルトン)はクリムゾンやProjeKct関連等のレコーディング・エンジアニアという以外よく知らないが、ProjeKct系がセッションの“断片”を編集して曲として構成したものだとしたら、この「Message 22」は、もともと“曲”として形になっていたものを、雰囲気を大きく変えずに加工・編集し直したように思える。拍子が目紛しく変わるのは面白いが、8分音符が1個だけぶら下がっていたり等、あからさまな切り貼りは評価が分かれるところだろう。しかし、よく聴くと“素材”そのものはインプロやジャムでなく、あらかじめ作曲されている音源のようで、完成度は決して低くない。何らかの事情でPTBには収まる場所がなかった曲を、ただお蔵入りさせるは勿体ないと思ったパット・マステロットが「どうせなら!」…と、やりたい放題・好きなように加工した実験作なのかも知れない。聴き始めの頃は、つかみ所のない曲だと思っていたが、変拍子などを数えたりして探っていくうちに少しずつ面白くなり、今では“かなり”お気に入りの曲となった。

※収録内容については、以下のサイトに詳しく載っています。
>>King Crimson Data Base
>>Fractalism
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え〜、ここでまずお断りして予防線を張っておきますが…
私は譜面や音符が苦手です…(^_^;)
もっと言うと、そもそも「1拍」とか「1小節」の意味がよく分かっておりません。
だから、しょっちゅう「エイトビートの1小節は4拍だっけ?」となるし、
“早いテンポの8分音符”と“遅いテンポの16分音符”の区別が付かない時もあります。
あ"ーーーーっ(>_<)、こういう事を考えているだけで頭が痛くなる。
だいたい譜面を見ても、音やリズムがイメージ出来ません。

・・・という訳で、リズム譜とさえ言えないけど、拍子などの構成を自分なりに“図面”にしてみました。ですから、たとえば「8/4」という表記も、「4/4」ではスッキリしない1ブロック(たぶん2小節)のつもり。特に編集段階での人工的な操作が加えられている箇所は、リズムの頭が分かり辛く、そういう所は“数えやすい楽器”を頼りにしました。よって実際にはポリリズムになっている事をスルーしている可能性もあります(+_+)が、全体の“音の長さ”は図面の通りのはずです。

さて、「Message 22」は、こんな感じです…

1.
イントロは、明らかに編集された6/4拍子の邦楽弦リフ。3回繰り返した後は4拍子(表記は8/4)に変わりフィルイン。元はこの拍子で演奏されていたと思われる。そしてPTBでも聞かれたエイドリアン・ブリューの加工されたヴォイスが入る。この曲はヴォーカル・パートが少ない上に全てが電子的に加工された声。しかも大半は歌詞がない。シモンズ風ペダル・ハイハット(図面では△マーク/以下“CH音”と表記)は、イントロでは奇数拍オモテ、その後は偶数拍のウラに変わる。ヴォーカル・パート前半では再び奇数拍のオモテに戻るが後半では偶数拍のオモテ、そして偶数拍のウラ…と変化。そして、リズム・パターンが裏返る奇妙なパートに入る。
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2.
バスドラ(茶色の丸/“キック”と書いた方が通じる?)が1拍・3拍の裏、スネア(緑)が2拍・4拍の裏という具合に半拍ずれて裏返ったパートから、3/8を経てミニマル・リフの7/4拍子になる。このあたりなども最初は気持ち悪く感じるが、分かると快感。ここからのリフは邦楽弦ではなく普通にギターの音。7/4の始め4拍は“裏返ったノリ”を引き継ぐが、後半3拍から“比較的”ノーマルな7拍子に。アクセントをずらしたパターンが気持ちいい。“裏返ったノリ”と“アクセントをずらした”ノリの違いは実際に聴かないと分からない(笑)。と言いながら、7拍子の2小節目以降はトレイの弾くWarr Guitarのアタックのせいでバスドラの位置が不明(´・ω・`) 。CH音は前パートの偶数拍ウラ打ちを継続し、その後3/8が入るので7拍子リフからは1小節毎に奇数拍と偶数拍が入れ替わる。ブラッフォードも好んで演っていたパターンだ。4小節目では6拍子になる。
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3.
次のヴォーカル・パートでは、前の7/4〜6/4と同じペースでCH音が打ち続けられるので、10/4と次の8/4までは偶数拍のオモテ。途中から奇数拍の裏になり、その後ベース(Warr Guitar)と邦楽弦(フリップのサンプリング・ギター)のパートでは不規則に。クリーム色の丸はCH音に似たヴィブラフォン系のパーカッション。Warr Guitarのメロディーを中心に何となく当てはまりそうな拍子を数えたが、他の演奏とポリリズムになっている可能性もある。だとしたら、完全にお手上げ/(^o^)\
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4.
最も分かりにくく数えにくいパート。ここからCH音は奇数拍のウラで10拍、その後は偶数拍のウラを打つ。最後に8分音符1個が余分にあるため、4拍子のパートからは奇数拍のオモテ。そこからの刻みはリズムの頭だろう(…と思いたい)。ヴォーカルが終わり、抽象的なブリューのギター・ソロが静かに始まる。最後が9拍子で次のパートのリフにスムーズに繋がる。
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5.
前のパートから続くCH音を、偶数拍のオモテでキープしながらの4拍子に、REDの中間部のような9/8と6/8が組み合わされたギターとベース(Warr Guitar)のリフが乗っかる。4拍子24小節(8/4で12小節?)で収めるクリムゾンらしいポリリズムだが、ラテン系パーカッションの音色も使われている。
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6.
静かなパートの最後、4/4の2拍目でCH音は終了。3/8という半端な拍を挟んで、いよいよ後半戦突入のフィルイン。
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7.
フリップの邦楽弦リフと、同じくフリップのヴォリューム・ペダルを使った(?)バッキングに、ブリューのギターがウネウネと絡む。ここは4拍子だけで進行する唯一のパート(笑)
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8.
ブリューのフレーズがメロディアスになり、途中からベース(Warr Guitar)と共に変拍子を交える。
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9.
最後のヴォーカル・パート。後半はターン・テーブルのプレイのようなギクシャクした編集パート。
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10.
最終章は、緊張感溢れる3連を交えた邦楽弦のフレーズの後、ベース(Warr Guitar)が先導する変拍子パートがあり、ラストは5連と6連を交えたフレーズで決めて終了。
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これを読むと凄く長い曲のように思えるかも知れないが、わずか5分23秒のコンパクトな曲です。

やっぱり、琴や三味線のような邦楽器の音源を使った事で随分とイメージ的に損をしているように思う。上記サイトFractalismにも書かれているように、どうしてもチープに聞こえてしまうのだ。普通にロックなギターにしていれば、すんなりとPTBのアルバムに馴染んで無事に収録されたかもしれない。アルバム全体の収録時間も50分ちょっとしかないし…
b0183304_2158273.jpg■King Crimson
『The Power To Believe(2003年)』


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