『彼岸花』『宗方姉妹』での小道具操作:小津安二郎

撮影と小道具に関する「小ネタ」という記事で、小津はカット毎にベストな画を創るために、湯呑みなどの小道具を移動させる事について書いた。ところが、たまたま見つけたカットは重箱の隅を突くようなもので、実はどうもスッキリせず“小ネタ”ということで紹介しました。
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ところが、こちらのブログでもコメントを頂いたmixiの「KEIさん」という方から、同じ『彼岸花(1958年)』での赤い小道具の移動が不自然で違和感を持っていたとのメッセージと書き込みがありました。「カットから別のカットに移ると、さっきと小道具の位置が変わっていることが、ずっと気持ち悪いと思っていた」そうです。しかし悔しいことに(笑)、そこまで目立つ小道具の移動が発見出来ずにいたのでした。その事をトピックでコメントしたところ、具体的にシーンを示して頂けました。移動していたのは有名な赤い(朱色の)ヤカン。やはり、これを載せずして小津の「カット単位の小道具」の秘密を知った事にはならないでしょう。改めて見てみると、どうして気付かなかったのだろうという具合の小道具操作。以下、そのシーンです。

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何かを言いたげな、異様に目立つ赤い(朱色?)ヤカン。
静止カットでは部屋の角に置かれている。
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平山(佐分利信)の帰りを清子(田中絹代)が玄関で迎える。
ヤカンの位置は変わらず。
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ところが平山が部屋に入ると、ヤカンは障子の端まで移動。
襖の向こうから存在をアピールしてます(笑)
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次に幸子(山本富士子)が平山邸を訪ねるシーン。
玄関で出迎えるカットでは、さっきのシーンと同じく部屋の角。
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カメラポジションが変わっても位置は変わらず。
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ところが幸子が部屋に入ると、ヤカンは障子の組子2つ分ほど部屋の中央に移動。
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女中が来て、幸子が一旦部屋を出る。
廊下をぐるっと回って茶の間の向こうから平山に話しかける。
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幸子に応える平山のカットでは、ヤカンは更に移動。
障子の端を越えてしまっている。
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次に、このブログでも何度か載せている『宗方姉妹(1950年)』の2つのシーン。これも、アップと全身ショットで照明が逆になる分かりやすい例としてmixiのトピックにコメントついでに掲載したところ、またもやKEIさんは「小道具が動かされていますよね」とズバリ指摘(笑)
見直してビックリ。自分で切り取った画像なのに全く気付かなかった。

このアップでのカットは、器の乗った台が右に寄せられている。
タンスと鴨居の上に乗った小物と一緒に中央に移動しているようだ。
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もう一つのシーンでも、アップの時は台が中央に移動。
タンスも中央に寄り、鴨居に掛けられた洋服に接近。
縦枠は田中に隠れて見えない。
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正確ではないが、小道具のサイズに合わせてアップの画像を縮小すると、こちらのアップ(バストショット)の方が小さくなる。アップの撮影では上の明るい着物のカットよりも奥の襖に近い距離で撮影しているという事だろう。

このように、画面に入れたいものはシーン全体としての整合性がなくてもスクリーンのフレームに収まるように、その都度移動させられ、小津の思い描く1カット1カットとして撮影されるのか。きっと丹念に探していけば、こういったカットはもっと見つかるのだろう。

次回は、チャップリンの『ライムライト(1952年)』での小道具の移動というか差替え操作について書きます。

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