2010年を振り返って(今さらながら…)
ある日、タワレコのワールド・ミュージックのコーナーで「カンドンベ・・・太鼓の王様・・・」などと書かれたPOPに目が留まった。民族楽器を叩いている(写真を加工した)絵をあしらった緑のジャケットに惹かれて衝動買い。

『プーロ・センティミエント』
2年ほど前によく聴いていたブラジルの宗教音楽「カンドンブレ」のアルバムみたいに“現地録音”的な土着サウンドを期待してプレイボタンを押して「ん?」。ピアノとヴォーカルが入った、リズミックではあるがモダンな音が飛び出した。思わずストップボタンを押してCDを取り出してレーベルを確認した。間違ってなかった(笑)。勘違いして、ブラジルのカンドンブレ(candomblé)ではなくウルグアイの伝統音楽カンドンベ(candombe)の集団と共演するマルチ・ミュージシャンのプロジェクトのアルバムを買ったのだった。しかし、これが大当たりで、複雑ながらタイトな太鼓のリズムとピアノのリフが心地良い。ウルグアイ音楽は初体験だったが、中南米ミュージシャンの“伝統を保ちつつ進化させる”姿勢と力量には、いつも感心させられる。
同じく、POPのコピーに惹かれて衝動買いしたキューバ出身のオマール・ソーサ率いるビッグ・バンドのアルバムも良かった。

『セレモニー』
重厚で芳醇なラテンなのだが、ホーン群の響きはシャープとかホットというより柔らかくて暖かい。もちろんギル・エヴァンス〜マイルスのバンドとも違う。なぜかルース・チューブス(ビル・ブラッフォードのアースワークスに在籍したジャンゴ・ベイツ率いるビッグ・バンド)に似ていると思い、『オープン・レター』
あと、長年自分の手許から離れていたアルタード・ステーツの『モザイク』

『モザイク』
ファーストも入手したが、こちらはクリムゾンというよりビル・ラズウェル〜フレッド・フリス〜フレッド・メイハーのMassacre(マサカー)

『ALTERED STATES』
よく通ったTSUTAYAの「ポスト・ロック」コーナーに並んでいた知らないバンドも片っ端から興味で借りて、そのうち特に日本のtoeや、米国のBattlesのハイベルな演奏にブッ飛んだ。(オッサンにとっての)新世代プログレでもあり、いまだロックは健在だった。
■toe
■Battles
映画も、ヒッチコックやルビッチなどクラシック作品を中心に色々鑑賞したが、今一度チャップリンの初期短編を本腰を入れて観てみようと思い、キーストンでのデビュー作からファースト・ナショナル時代までの70本以上を全て観直した。さすが若いだけあって驚異的に切れのある運動能力や溢れんばかりの豊富で自由なアイデアに驚き呆れたが、それ以上に、時代を作っているという勢いが強烈なオーラを放っていた。数々の短編には、もちろん再発見も色々あったのだが、何本かの作品に登場する役者の一人ロイド・ベーコンが気になり、彼が監督したミュージカル『フットライト・パレード(1933年)』
先に書いた『千と千尋』でも自分の見る夢に近いイメージが登場するのだが、私にとっては『アメリ』


寅さんシリーズなど、気楽に楽しみたいものを考えていて、突然ある女優を思い出し『サード』『もっとしなやかに、もっとしたたかに』『十八歳、海へ』『処刑遊戯』『トラック野郎 故郷特急便』などをレンタルした。同世代でなくともピンと来るだろうが、目的は森下愛子だ。映画によっては浮いてしまっている作品もあるが(笑)、講義をサボって映画館に通っていた頃を懐かしむ事ができました。ATG関係も、また借りてみよう。
このブログで、一昨年から何度か取り上げていた小津安二郎に触れない訳には行かない。何の事件も起こらない平穏なホームドラマの面を被った、しかし一筋縄では済まない独特な手法の面白さに気付くと、正に“底なし沼”のように抜け出せなくなる。本当に昨年は恵まれた事に、特に“mixiコミュの強者の方々”には、大いにお世話になりました。自分の勉強不足を痛感したこともあり、より客観的に小津作品を観られるように、最近は少しだけ“小津断ち期間”を作っています。
そして、今のマイブームは「丹下左膳」と「山中貞雄」。昨年末から思いっ切りハマっております。丹下左膳は6本鑑賞。山中貞雄は、左膳の『百萬兩の壺』と『河内山宗俊』を観た。しかし現存する山中作品は、あと1本だけ。余りにも早く逝き過ぎた奇跡の天才を今まで知らなかった事もショック。時代劇というより、いわゆる“チャンバラ映画”と思い込んで、なんとなく敬遠して後回しになっていた作品群。今さらながら、自分の“偏食”ぶりに気付かされたのだった。